プロフィール

氏名中山良一
NAKAYAMA, Ryoichi
役職/職名専任講師
取得学位日本大学/日本大学大学院 博士(生物資源科学)
研究職歴2016.04-2021.03 工学院大学先進工学部環境化学科
2021.04-現在 関東学院大学理工学部理工学科応用化学コース 専任講師
研究分野化学工学・生物化学工学・食品工学
所属学会化学工学会・食品工学会
連絡先nakayama<AT>kanto-gakuin.ac.jp

研究業績は こちら

研究内容

海藻由来のバイオポリマーで未来の素材を創る!

 皆さんは「海藻」と聞いて何を思い浮かべますか?実は、昆布やワカメの“ヌルヌル成分”には、地球環境を救うかもしれない凄い可能性が秘められているのです。私たち中山研究室では、石油由来のプラスチックに代わる、環境に優しい「生体高分子(バイオポリマー)」の研究をしています。

 本研究の主役は、褐藻類から採れる「アルギン酸」と、ゼリーの凝固剤などにも使われる紅藻類の「カラギーナン」です。この2つを独自のレシピで混ぜ合わせ、金属イオンで固めることで、全く新しい性質を持つ「膜(フィルム)」を作りました。 実験では、混ぜるカラギーナンの種類(カッパ・イオタ・ラムダ)や量を変えるだけで、膜の「硬さ」や「伸びやすさ」、さらには「物質の通しやすさ」まで自由にコントロールできることを発見しました!特に「イオタ」という種類を使うと、柔軟で物質をよく通す膜ができることが分かりました。

 この技術は将来、汚れた水をきれいにするフィルターや、体の中で薬を運ぶカプセルなどに応用できるかもしれません。身近な素材から最先端の化学へ。私たちと一緒に、未来の素材をデザインしてみませんか?

【化粧品×化学】植物由来の新素材「CNF」で挑む、肌に優しい次世代エマルションの創製

 私たちの身の回りにある牛乳やマヨネーズ、そして化粧品の乳液やクリーム。これらは本来混ざり合わない「水」と「油」が微細な液滴となって分散した「エマルション」と呼ばれる状態です 。通常、これらを安定させるためには「界面活性剤」が必要ですが、モノによっては肌への刺激や環境への負荷が懸念されることもあります 。

 そこで本研究室では、植物(バイオマス)由来の最先端素材「セルロースナノファイバー(CNF)」に着目しました 。CNFは木材繊維をナノレベルまで細かくしたもので、軽量かつ高強度、そして高い安全性を持っています 。この微細な繊維を、界面活性剤の代わりに「粒の保護壁」として油滴の周りに配置することで、界面活性剤フリーで非常に安定した「ピッカリングエマルション」を作ることができます 。

 この研究の核心は、単に混ぜるだけでなく、その「つぶ(液滴)」の大きさを自在にコントロールできる点にあります 。私たちは、撹拌のスピードや油の種類、CNFの添加量を調整することで、液滴径がどのように変化するかを詳細に解析しています 。

 液滴のサイズや安定性は、化粧品の塗り心地やテクスチャーに直結します。化学の力で植物の可能性を引き出し、環境に優しく、かつ高機能な未来の化粧品開発の基盤を作ること。それが私たちの挑戦です 。

「増粘剤フリー」で理想の“とろみ”を創る。粒子径制御が拓く次世代コスメの「流れの科学」

 化粧水やクリームの「とろみ」や「粘り」を出すために欠かせない「増粘剤」。しかし、これらは時にベタつきの原因となったり、肌への浸透感を損なったりすることがあります。 そこで当研究室では、増粘剤などの化学的な添加物に頼らず、粉(シリカ粒子)と少量の水を混ぜる物理的な力だけで流動性をコントロールする「キャピラリーサスペンション」という新技術の研究に取り組んでいます。

この現象の鍵は、濡れた砂が固まるのと同じ原理である「液架橋(Liquid Bridge)」です。油の中に分散した粒子同士を、ほんのわずかな水が橋渡しすることで、液体の中に目に見えないネットワーク構造が生まれ、独特の粘性が発現します

本研究では、この技術を化粧品に応用するため、粒子の「大きさ(粒子径)」が構造の安定性にどう影響するかを検証しました。実験の結果、粒子径が比較的小さい場合は安定したとろみが持続するのに対し、粒子径が大きい場合は、時間の経過とともに粒子同士の結合が弱まり、粘度が低下してしまう(サラサラに戻ってしまう)現象が確認されました

私たちは、こうした「なぜ崩れるのか?」という不安定さの原因を解明し、粒子径を最適化することで、肌に優しく、かつ長時間安定した「次世代の機能性流体」の設計指針を確立することを目指しています。化学と物理の視点から、まだ世にない新しい化粧品の基礎を作る研究です。

捨てられる「果皮」から、未来の健康成分をクリーンに抽出!

私たちが普段食べているミカンなどのカンキツ類。実はその「皮」には、冷え性改善や花粉症対策などで注目される機能性成分がたっぷりと詰まっています。

本研究では、神奈川県産の「湘南ゴールド」の果皮に注目し、これらの成分を無駄なく取り出す研究をしています。

「超臨界二酸化炭素」で成分を狙い撃ち

皮に含まれる成分の中には、水に溶けにくく取り出しにくいものがあります。そこで私たちは、二酸化炭素に圧力をかけて特殊な状態にする「超臨界流体」の技術を応用しました。この技術を使うと、有機溶媒を使わずに、欲しい成分だけを効率よく抽出することが可能です。

環境にも人にも優しい化学

この研究は、廃棄されるはずだった資源を有効活用し、かつ環境負荷の低い方法で高付加価値な成分を生み出す「グリーン・ケミストリー」の実践です。地域資源の活用と最先端の化学工学を融合させ、人々の健康に貢献することを目指しています。

植物の「ゴミ」を未来のエネルギーへ!超音波のチカラでバイオ燃料作りを加速させる

 持続可能な社会の実現に向け、石油などの化石燃料に代わり、サトウキビの搾りカス(バガス)などの「未利用バイオマス」をエネルギー資源として活用する動きが加速しています 。しかし、植物の繊維は非常に強固な構造をしているため、燃料の原料となる「糖」へ分解(糖化)する効率が低いことが実用化への大きな壁となっていました 。

【アプローチと成果】
 そこで本研究では、化学薬品を使わない物理的な加速手法として「超音波」に着目しました 。酵素が熱で機能を失わないよう「1秒照射・5秒停止」という独自の間欠照射プロセスを確立 。実験の結果、超音波が生み出す衝撃(キャビテーション)がバガスの強固な細胞壁を物理的に破壊し、酵素(特にAspergillus niger由来)が内部まで入り込むことで、反応速度が飛躍的に向上することを実証しました 。

【未来への展望】
 本手法は、残留毒性の懸念がないクリーンな技術です 。捨てられていた植物資源から効率よくバイオエタノールを生み出す、環境負荷の低い次世代エネルギー生産システムの構築を目指しています