HAMAGAMI Jun-ichi
濵上 寿一
応用化学コース 教授
ノーベル化学賞を受賞した「量子ドット」の応用研究
2023年のノーベル化学賞は、「量子ドット」と呼ばれるナノ粒子に生じる特殊な効果の解明に貢献した研究者たちに授与された。量子ドットとは100万分の1ミリという極小サイズの粒子のことで、光や色に関する特性から、様々な用途での応用が期待されている。応用化学コースの濵上寿一教授が研究する「プラズモニック金属ナノ構造体」と「蛍光性カーボンドット」も、これら量子ドットのひとつだという。
「私の専門は無機材料科学です。周期表上の元素を用いて機能性材料の研究と開発を行っています。プラズモニック金属ナノ構造体や蛍光性カーボンドットは、その中のひとつで、病気の診断に使われるバイオセンサなどへの応用が期待されています。私たちの研究室では、これらの応用研究だけでなく、低コストで短時間でできる合成方法の開発にも取り組んでいます。材料科学は、英語でマテリアルズ・サイエンスと呼ばれ、世界的にも注目されている分野です」
電子レンジや市販の素材で新規材料を低コストで開発
濵上教授の研究室では、身近な原料や器具を使って、環境に優しいプロセスの開発に注力している。例えば、蛍光性カーボンドットの合成には、安価なクエン酸と尿素を使用し、家庭用電子レンジでマイクロ波加熱することで、環境に負荷をかけず、低コスト・短時間で実現できる独自の方法を開発した。
「私たちの研究室では、他にも環境にやさしいプロセスを用いたナノマテリアルの創製と機能性評価に関する研究を行っています。材料科学の魅力は、未知の新材料や合成方法を発見し、脱炭素社会の実現に向けた研究に貢献する可能性があることです。予想外の材料が意外な機能性を持つこともあります。また、省エネルギーで低コストなプロセスの研究も重要で、自然界や100円ショップの素材で新材料を開発するなど、真剣に取り組んでいます」
濵上教授はもともと電気電子工学を専門としており、学生時代は室温作動型オプティカル水素センサの研究を行っていた。ものづくりの研究を進める中で、応用化学への関心が広がり、無機化学を基礎とした材料科学の研究にたどり着いた。
「社会を豊かにする研究と開発には、優れた材料が不可欠です。今後も学生たちと一緒に新たな材料開発への挑戦を続けていきます」