『分析化学』『無機化学』『物理化学』『有機化学』『化学工学』の5領域を基幹科目群としています。各科目にはⅠとⅡがあり、Ⅰは必修として基礎力を確立する。この必修科目には、少人数での再履修クラスを設定するとともに、これらの演習となる「応用化学演習Ⅰ、Ⅱ」も設定しています。また、対応する実験科目である「分析化学実験」、「無機化学実験」、「物理化学実験」、「有機化学実験」、「環境・化学工学実験」も必修としています。これらの講義、実験、演習を通じて、使える知識の確立を目指します。

5基幹科目

物理化学、無機化学、有機化学、分析化学、化学工学の5領域を基幹科目群として学びます。応用や効率化に必要不可欠な真の基礎力を身につけます。また、基幹科目群に対応した各種実験・実習を通して、知識の深化と使える知識の確立を図っています。

無機化学

われわれの身の回りには生活を豊かにするための多くの材料や物質がある。

材料は無機材料、有機材料、複合材料に大別される。さらに、無機材料は金属材料とセラミック材料に分類できる。無機化学は周期表上のすべての元素を対象としている。高付加価値な最先端の機能性無機材料を創製するには、無機化学の基礎知識の習得が重要である。本授業では無機化学を理解するために必要となる事項について解説する。

有機化学

生体はもとより我々の身の回りに存在する物質のほとんどが有機化合物である。

有機化学は最先端の機能性物質までも含む広範囲の物質科学や生命科学の基礎的な学問として重要である。有機化学では、有機化学の基礎概念および有機化合物をその性質や反応を支配する官能基により分類して学ぶ。さらに、標的化合物の最適合成方法の設計方法を解説する。

分析化学

最初に、化学の基礎となる定量分析の「グラム等量」の概念を理解し、使いこなせるようにする。定性分析としては、陽イオンの系統的な分析を学ぶ。化学の基礎を学んだ後に、陽イオンの定性分析、中和滴定、酸化還元滴定、キレート滴定、重量分析、機器分析を学ぶ。機器分析の測定原理、測定法の特徴、得られたデータの解析法を理解することは、化学の様々な分野の土台づくりとなる。実例を紹介しながら分析化学での数字の取扱、表面分析、無機化合物分析、有機化合物分析に用いられている様々な機器分析の原理、利用法について解説する。

物理化学

物理化学は、化学の基礎となる原理や法則を取り扱う学問といえる。

原子、分子、化学結合、化学熱力学、化学平衡等の理論や原理に関する講義の後に、理工学への展開・応用について詳細に述べる。理論式(アレニウスプロットなど)を展開し、図面に表現してその意味を理解する。さらに、化学エネルギーと電気エネルギーの橋渡しとして、熱力学と電気化学の関連性を説明し、実社会に近い内容を通して実践的内容を解説する。

化学工学

化学工学は化学物質や反応を鉱業プロセスで扱う上で必要となる設計・解析手法を学ぶ。

講義では、基礎となる物質収支・エネルギー収支および移動現象の考え方を学んだ後、その考え方に基づいて、蒸留や吸着を例として化学プロセスの操作設計の技法を学ぶ。また、その準備として反応の速度および操作について学ぶ。

実験

理工学基礎実験Ⅰ・Ⅱ

理工学部に入学して初めての実験である。理工学部分野の実験を行う上で必要となりうる化学と物理の基礎実験を通して、【実験への姿勢】および【レポートの書き方】を学ぶ最重要な実験といえる。

具体的な基礎実験は、化学分野からは定性分析・定量分析、物理分野からは物理量測定(長さ、質量、時間、電流、電圧、周波数など)と基本計器の操作法(ノギス、マイクロメーター、電流計、電圧計、オシロスコープ、発信器など)である。

化学実験

本実験は学部2年時以降の専門実験(卒業研究)の基礎といえる重要な実験である。各種実験器具の名称と正確な取り扱い・定量分析に用いる精密機器の取り扱い・ガラス細工について学ぶ。さらに、化学実験の危険性と回避方法や事故発生時の対処法を具体的に学ぶ。また、実験で生じた各種廃棄物の分類と処理方法についても学ぶ。

上記の内容を次の実験課題を通して実践的に身につける。

  1. 金属イオン(I属・II属・III属)の分離分析法
  2. 各種ガラス器具の製作
  3. 実験廃棄物の処理

無機化学実験

基本的な無機化合物の合成法と代表的な無機酸の精製法に関する実験を通して実験技術を習得する。

講義で学んだ無機化学の知識に基づいて以下の実験を行う。

  1. 塩酸の蒸留
  2. エチレンジアミンテトラセンタコバルト(III)酸カリウムの合成
  3. 硫酸銅結晶の合成
  4. ミョウバン結晶の合成
  5. イットリウム系高温酸化物超電導体の作製と特性

分析化学実験

分析化学は、「化学」についての多くの基礎知識が含まれている。試料中の化学種を定性・定量分析を行い、試料の特性を理解することは、科学知識の習得のための第1歩といえる。分析化学の必要性・原理・方法を理解し習得する。

講義で学んだ分析化学の知識に基づいて以下の実験を行う。

  1. 抽出
  2. 再結晶
  3. クロマトグラフィー
  4. 分解電圧
  5. 溶解度と溶解熱
  6. 電極反応
  7. 結晶水の定量
  8. 食酢中の酢酸の定量
  9. ワーダー法

有機化学実験

講義で学んだ有機化学の基礎知識に基づいて、以下の実験を行う。

  1. 酢酸とエタノールの縮合反応
  2. 無水酢酸とゲラニオールのアセチル化反応
  3. サリチル酸と無水酢酸の反応によるアスピリン合成
  4. 安息香酸メチルエステルと硝酸による芳香族求電子置換反応
  5. ヨードベンセン合成による芳香族求核置換反応
  6. フェニルアセチレン合成によるハロゲン付加と脱離反応
  7. スルファニル酸と2-ナフトールの染料合成
  8. シンナムアルデヒドと水素化ホウ素ナトリウムのアルデヒド還元反応
  9. シクロヘキサノールとニクロム酸塩の酸化反応
  10. クラウンエーテルの合成と触媒作用
  11. ポリアミド樹脂合成とフィルム作製

物理化学実験

物理化学では複雑な自然現象を解析して単純化し、さらに一定の条件下で同一変化を繰り返すことができるため、研究手段としては欠かすことのできない実験手法といえる。

講義で学んだ物理化学の基礎知識に基づいて以下の実験を行う。

  1. 加水分解と活性化エネルギー
  2. 電導度測定
  3. 分解電圧
  4. 電池の起電力
  5. Ni-Cd二次電池の充放電特性
  6. 分配律
  7. 溶解度と溶解熱
  8. 二成分系の液体蒸気平衡
  9. ファラデーの法則
  10. 金属の腐食・紡織とアノード・カソードの関係
  11. 電流・電位曲線と分極
  12. 表面自由エネルギー

環境・化学工学実験

講義で学んだ化学工学の基礎知識に基づいて、以下の実験を行う。

  1. 圧力損失
  2. 物質の移動現象
  3. 単蒸留
  4. 吸着平衡
  5. 密度・粘度の測定

機器分析実験

物質の物理的・化学的特性について機器を用いて分析を行う。近年の分析法の主流であり、簡単な操作でデータの取得が行える。一方、ブラックボックス化の要因となりうる。本実験では、実際の機器を操作しながら、その原理を理解する。講義で学んだ知識に基づいて以下の実験を行う。

  1. 赤外吸収スペクトル(FT-IR)
  2. 紫外可視吸収スペクトル(UV-vis)
  3. 質量分析法(MS)
  4. 走査型電子顕微鏡(SEM)
  5. 原子吸光光度法(AAS)
  6. 核磁気共鳴法(NMR)

卒業研究

各研究室に所属して卒業研究を行う。