今や多くの一般家庭に普及している太陽電池パネル。そのパネルの原材料となるシリコンは、製造過程でおよそ半分以上が廃棄物として処理されてしまうのだという。
「食パンを切るときも、ナイフの厚み分のパン屑が出ますよね。太陽電池パネルの製造原理も同じで、シリコンをパネルの厚さにカットする際に、シリコンの切り屑が必ず発生してしまうんです。さらに、切り屑の中には切断の際に使用するワイヤー部分の金属や、切る際に高温になるのを防ぐクーラントという液体も混ざっています。そのため、再利用の工程にはかなりのコストがかかるため、現状では廃棄物処理されています」
 しかし友野准教授は、その課題を“逆転の発想”で解決した。多くの研究者は『シリコンの中から不純物を取り除く』というアプローチで研究を進めたが、友野准教授は『不純物の中からシリコンを取り出す』という方法で、切り屑の中から純度の高いシリコンを抽出することに成功したのだ。
「シリコンに反応する臭化水素を使って、ブロモシランと呼ばれる液体の化合物をつくり、切り屑の中から抽出します。この方法だと不純物を取り除く必要がないため、リサイクルにかかるコストも10分の1に抑えられます」
 太陽電池パネルの寿命はおよそ20年~30年。2030年ごろには、国内の産業廃棄物の総排力量の0.2%が太陽電池パネルのゴミになるという報告もある。使用後の太陽電池パネルを再利用するにはどうすればいいのか?コストはどれくらいかかるのか?友野准教授の研究は、多くのメーカー企業からの注目を集めている。

 ブロモシランとして抽出したシリコンは、スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池の材料になり得るという。
 「現在のリチウムイオン電池の負極には炭素材料が使われていますが、炭素の代わりにシリコンを使うことで蓄電量が10倍程度になると知られています。リチウムイオン電池を開発している研究者はたくさんいますが、太陽電池パネルの廃棄物からリサイクルした材料を使おうとしているのは、世界でも数えるほどしかいません」
 「リサイクル」の技術で、限りある資源からエネルギーをつくり出す――。資源の乏しい日本において、友野准教授の研究はエネルギー問題を解決するための大きな力になるかもしれない。